新商品を市場にするタイミングの判断は非常に難しい。成長市場の中では他社に先駆け市場投入することでシェアを確保することが重要である。一方で、市場投入が早すぎると、ユーザーが追いついて来ないため、ごく一部のマニアが手にしただけで製品のライフサイクルが終わってしまうこともある。
今でこそ多くの人がスマートフォンを使う時代になっているが、その昔、PDA(Personal Disital Assistant)という端末があったのを覚えているだろうか?PDAは一部のユーザー層に受け入れられたが、普及したとは言い難い状況であった。
市場投入のタイミングはシェアを十分確保できるぐらい早くなければならないし、早すぎてもいけない。これは事実であるし、多くの商品企画担当者やマーケティング担当者は、この市場投入のタイミングを最適化するために様々な分析を行っている。しかし、重要性を認識し、分析に多くの時間を費やしたからと言って、それが実際にできるようになるとは限らない。
市場投入のタイミングを決める上で、何がそんなに難しいのか?
一番難しいのは、将来を予測しながら進める点である。
予測という言葉の意味を広辞苑で調べると
将来の出来事や有様をあらかじめ推測すること、前もっておしはかること。「景気を予測する」「予測がつかない」
となっている。要するに推測の域を得ないということになる。いくら分析をして、今後の市場環境を予測して参入しても、外れる可能性も非常に高いという前提に立つ必要がある。
しかも、市場参入を決めてから海外での販売を始めるまでのリードタイムも考慮する必要がある。一から海外進出しようとすると、会社設立手続きから始まるが、例えば中国に会社を設立しようとすると半年から1年の期間がかかる。しかも、貿易の認可を受けるための手続きも難しく、会社によっては参入を決めてから認可を得るまでに約3年間を要した事例もある。
3年も経てば顧客のニーズは変わることが多い。
3年前は塩麹がブームとなり、塩麹関連の商品か多く市場に投入されたが、今はそれほどでもなくなってしまった。
昨年大ヒットし、Amazonや楽天での高値販売が話題となったDX妖怪ウォッチも、今では簡単に手に入るようになってしまった。
3年どころか、1年でもニーズは変わるのである。
需要予測をするのであれば、3年後の需要まで見越した予測が必要となるが、これを当てるのは至難の技なのである。
ある大手コンサルティング会社の経営コンサルタントは、「予想」ではなく「予測」すれば良いと言っているが、いかにも実務を知らないコンサルタントらしい発言である。