2015年5月30日土曜日

ユニクロでも難しいグローバルマーケティング

私は出張でマレーシアやフィリピンを滞在することが多い。マレーシアやフィリピンは常夏の国なので、年間の平均気温は27~33℃である。夏冬問わず、年間を通じて半袖とショートパンツでも良いぐらいの気候である。
ある年、冬の時期にマレーシアのユニクロの店舗を訪れた。その際に撮影したのが下記の写真である。

ユニクロのマレーシアにおけるグローバルマーケティング事例

ご覧の通り、ディスプレイは冬物だらけであり、現地の気候からすると「季節外れ」の商品が並んでいた。店内も日本の季節に合わせてヒートテックやフリース、厚手のコートがメインとなっていた。日本の真夏に冬物を売っている店を想像していただければわかる通り、まるで購買意欲をそそらない。

あまりにおかしいので店員にインタビューしてみたところ、
「マレーシア人も海外旅行する。寒い国に行く人がいるから、冬物は売れる」
という話であった。

また、現地の日本人にインタビューしてみたところ、
「マレーシアはまだ空調の微調整が効かないことが多く、部屋の中に入ると寒すぎることがある。その際にヒートテックがあると非常に便利だ」
とのことだ。これは一理ある。

しかし、いくらなんでも前面に冬物を出すことは無いのではないか?

試しに、6月にフィリピンのユニクロを訪れてみた。その時に撮ったのが下記の写真である。

ユニクロのフィリピンにおけるグローバルマーケティング事例

ご覧の通り、ディスプレイされているのは夏物である。この時期に冬物がディスプレイされることはない。上記のマレーシアで聞いた理屈のように、「寒い国に行く人がいるから冬物が売れる」のであれば、堂々と冬物をディスプレイすれば良さそうなものであるが、やはりそれはしないのである。

結局、英語を公用語化し、海外に店舗を出しているユニクロと言えども、現地の気候に合わせた商品展開はできておらず、日本と同様の商品を海外でも売っているにすぎない。これでは真のグローバルマーケティングとは言えないのである。

一方、ユニクロの立場に立って考えてみよう。工場で生産する際、販売量の多い日本や中国の季節感に合わせて商品の生産を計画すると、冬場はヒートテックやフリースを多く生産することになる。たとえ、東南アジアで夏場の主力商品であるエアリズムが売れるとしても、そのために工場で段取り替えをしていたら効率が落ちてしまう。すると、ヒートテックの生産に支障をきたすかもしれないのである。
こうした生産側の事情が前面に出て、マーケティングや販売計画も引っ張られてしまうと、真夏にヒートテックをディスプレイするような現象が起こってしまうのである。
グローバルで事業展開する上では、現地事情に合わせた販売計画・生産計画が必要となる。今回挙げたユニクロのような衣料品で言えば、1年中、夏物衣料と冬物衣料を作り、供給できる体制作りが必要になるのである。



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2015年5月29日金曜日

グローバルマーケティングの課題(8) : 納品するタイミングがわからない

同じタイミングの話であるが、今度はオペレーションレベルの話をする。
実はこのタイミングの話が価格に大きな影響を与える重要な要因となっている。通常、商品の価格は商品のコストにマージンを乗せた金額が「定価」として設定される。この算出式を使うと、商品の価格は1つとなる。売れ残るとその定価からどれだけ値引きできるかを競うことになる。

しかし、実際には商品の価格は1つではない。
例えば、ANAを使って羽田空港から新千歳空港まで行く場合、普通運賃は37,790円である(2015年5月28日現在)。一方、約5か月先の航空券を買えば、11,490円(特割75使用時)で同じ便の航空券が買える。つまり、70%引きである。同じ航空券なのに2つ(実際には航空券の割引には複数の種類があるので2種類以上)の価格がある。その理由は何か?

ここでキーとなるのがタイミングなのである。

5か月先の予定がはっきりわかる人は当然11,490円で羽田から新千歳空港まで行くだろう。しかし、現実には社会人であれば休暇が取れるかどうかわからないし、仕事以外の予定も入ってくる可能性がある。そうなると、変更が出来ない特割75を使っていると、11,490円の取消手数料に加え、新たな航空券代が必要となる。時期によっては普通運賃しか予約できないタイミングで予約変更せねばならなくなり、「だったら最初から予約変更できるチケットにしておけば良かった」となる。

一方、普通運賃を利用するシーンはどんなシーンがあるのだろうか?普通運賃は予約変更ができるという利点に加え、直前でも購入できることが利点である。例えば、仕事の都合(大きな金額の商談を契約する時やトラブルの緊急対応で顧客先に行かねばならぬ時)や家族の病状が急変して一刻を争う時には、とにかくすぐに移動することが最優先事項となる。普通運賃と特割75の差額は26,300円あるが、今すぐ移動することで100万円の商談がまとまるのであれば、この26,300円をケチる経営者はいないだろう。同様に、家族の最期を見届けられるかどうかの瀬戸際で、26,300円をケチる人も少ないだろう。

他の例でも考えてみよう。

私は昨年、急速にプロジェクトメンバーを増やす必要に迫られ、5台ほどPCを買うことになった。
通常、今の時代にPCを買うとなればネットから買うのが一般的になりつつあるだろう。たしかに同じスペックであればネット購入の方が安い。 しかし、私はほとんどのPCを家電量販店で買うことになった。理由は、プロジェクトメンバーは加入次第すぐに働いてもらわねばならないからだ。ネット注文して1週間~2週間の納期がかかってしまっては間に合わないのである。多少の価格差があっても、すぐにプロジェクトに参加してもらい、プロジェクトの作業に貢献してもらった方がリターンが大きいのである。

このように、顧客が購入の意思決定をする際、その商品に支払っても良いと思う金額はタイミングの要素と密接に結びついている。今、すぐに必要ということであれば、多少高くても顧客は購入する。

それはBtoBの世界でも同じである。

製造業であれば、工場で部品を調達する際、必要に迫られた部品がすぐに納品できるとなれば、通常より高い金額で納入できる可能性も高い。
IT業界であれば、案件が集中しがちな3月や9月の業務の繁忙期、どこの会社も稼働率がいっぱいいっぱいであれば、エンジニアの単価が多少高くてもその会社にお願いせざるを得なくなるのである。

このように、商品をタイミング良く供給する体制を構築することは、グローバルマーケティング上、非常に重要な課題となる。

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2015年5月23日土曜日

グローバルマーケティングの課題(7) : 市場投入するタイミングがわからない

最後に、どのタイミングで市場投入するかを検討する。
新商品を市場にするタイミングの判断は非常に難しい。成長市場の中では他社に先駆け市場投入することでシェアを確保することが重要である。一方で、市場投入が早すぎると、ユーザーが追いついて来ないため、ごく一部のマニアが手にしただけで製品のライフサイクルが終わってしまうこともある。
今でこそ多くの人がスマートフォンを使う時代になっているが、その昔、PDA(Personal Disital Assistant)という端末があったのを覚えているだろうか?PDAは一部のユーザー層に受け入れられたが、普及したとは言い難い状況であった。



市場投入のタイミングはシェアを十分確保できるぐらい早くなければならないし、早すぎてもいけない。これは事実であるし、多くの商品企画担当者やマーケティング担当者は、この市場投入のタイミングを最適化するために様々な分析を行っている。しかし、重要性を認識し、分析に多くの時間を費やしたからと言って、それが実際にできるようになるとは限らない。

市場投入のタイミングを決める上で、何がそんなに難しいのか?

一番難しいのは、将来を予測しながら進める点である。
予測という言葉の意味を広辞苑で調べると

将来の出来事や有様をあらかじめ推測すること、前もっておしはかること。「景気を予測する」「予測がつかない」

となっている。要するに推測の域を得ないということになる。いくら分析をして、今後の市場環境を予測して参入しても、外れる可能性も非常に高いという前提に立つ必要がある。

しかも、市場参入を決めてから海外での販売を始めるまでのリードタイムも考慮する必要がある。一から海外進出しようとすると、会社設立手続きから始まるが、例えば中国に会社を設立しようとすると半年から1年の期間がかかる。しかも、貿易の認可を受けるための手続きも難しく、会社によっては参入を決めてから認可を得るまでに約3年間を要した事例もある。

3年も経てば顧客のニーズは変わることが多い。
3年前は塩麹がブームとなり、塩麹関連の商品か多く市場に投入されたが、今はそれほどでもなくなってしまった。
昨年大ヒットし、Amazonや楽天での高値販売が話題となったDX妖怪ウォッチも、今では簡単に手に入るようになってしまった。
3年どころか、1年でもニーズは変わるのである。
需要予測をするのであれば、3年後の需要まで見越した予測が必要となるが、これを当てるのは至難の技なのである。
ある大手コンサルティング会社の経営コンサルタントは、「予想」ではなく「予測」すれば良いと言っているが、いかにも実務を知らないコンサルタントらしい発言である。


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2015年5月20日水曜日

グローバルマーケティングの課題(6) : 広告宣伝における訴求方法がわからない

次に課題となるのが広告宣伝(Promotion)である。




グローバルで見ると、文化の違いにより表現が規制されていることがあるので要注意である。
広告宣伝の事例ではないが、ポーランドでは性別不明であることや着衣が不適切ということで「くまのプーさん」が発禁となった。




また、ブルボンはインドネシアで「プチポテト」というスナック菓子に豚肉の成分が含まれていることを明記していなかった点を問題視され、商品はすべて回収された。こうした規制について熟知した上で、海外での広告宣伝方針を立てていかねばならない。




また、規制ではなくとも、ブランドの印象を統一する観点と現地の人の好みに合わせる観点は対立することがある。例えば、中国人は金色を好む人が多い。それは、三国時代や南北朝時代に政権が不安定で貨幣よりも信頼性の高い金を持つことが多かったことの名残りである。しかし、日本で金を多用することはあまり好まれないし、場合によってはブランドイメージに影響を与えることがある。

同じ会社、同じブランドなのであるから統一したブランドイメージで訴求すべき。
現地で売るのであるから現地の趣向に合わせるべき。

どちらも背景にある考え方は正しいため、一概にどちらかに決められない問題である。


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グローバルマーケティングの課題(5) : 販売チャネルの決め方がわからない

価格を決めたとして、販売チャネル(Place)をどうするか?これも悩ましい問題である。
最近、アメリカや日本などの先進国ではあらゆる商品のインターネット販売が一般的になってきたので、ECサイトが販路として有望視されることも多い。単に英語や中国語のWebサイトを作って公開しているだけではアクセス数は見込めない。これだけインターネットが普及していると、既に同様の商品のWebサイトが公開されていることも多く、そうした有象無象の中で自社のインターネットサイトを差別化し、集客していくのは難しいのである。




AmazonやeBayなどのECモールを使えば良いではないか、という意見もあるだろう。たしかに、自社サイトを運営するよりは集客を見込める。しかし、モール内には既に多くの出店があり、差別化するためには広告施策などでコストがかかる。また、中国の有名なタオバオは出店審査時の本人確認なども厳格で、日本国内から出店手続きをするのも難しい(以前よりはだいぶ楽になったが・・・)。さらには、モールへの出品料、売買成立時の手数料なども支払わねばならない。

グローバルマーケティングの課題5



では、リアル店舗で売れば直ちにうまく行くのかというと、もちろんそんなことはない。第一、馴染みのない国/地域で信頼のおけるパートナーに出会うのは至難の技である。進出する国/地域に強固なネットワークを持つ会社と取引しようとすると、最低契約期間や取引時のマージンで折り合いを付けるのが難しい。それに対し、規模の小さい会社と組むと、契約条件は緩くしてもらえる可能性が高いが当然のことながら販売力が弱い。
こうした対立を解消しなければ前に進めないのである。

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グローバルマーケティングの課題(4) : 適正価格がいくらかわからない

現地の顧客層(「誰に」)を決め、商品自体の仕様(「何を」)を決めたとして、次に問題になるのが「どのように」の部分である。よく使われるマーケティングの4Pで言うところのPrice(価格)、Place(場所)、Promotion(広告宣伝)である。まず、価格について検討しよう。




当然のことであるが、グローバルで考えると日本とは購買力が異なる国/地域が多い。 成長基調にある新興国は購買力が低い国が多い傾向にあるため、現地において日本と同じ価格で売ろうとすると庶民には手が届かない価格となる。富裕層を狙えば良いという考え方もあるが、それではボリュームが確保できず、ビジネスとして十分なリターンを得られないことも多い。日本で生産している商品を海外に持っていけば輸送費がかかるので、従来のコストの考え方を適用して、製品のコストに輸送費を上乗せすると、日本よりも高い価格設定となる。
日本より購買力が低い国で日本以上の価格設定をするのであるから、富裕層に受け入れられるぐらいのブランド品を除けば、冷静に考えれば売れるわけがない。これもまた、グローバルマーケティングで課題となるポイントである。
グローバルマーケティングの課題4
 
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2015年5月17日日曜日

グローバルマーケティングの課題(3) : 商品を現地事情に合わせるのが難しい

「誰に」売るかを決め、ニーズを把握したとして、次なる課題は商品をどこまで現地事情に合わせてカスタマイズするかである。

当然、同じ商品でも現地の顧客の趣向に合わせた商品にした方が売れる確率は高くなる。しかし、現地の事情に合わせて個別化を進めるには相応のコストがかかる。製造業であれば、製品仕様の変更、部品の調達、生産工程の見直しなど、ものづくりのプロセス全体の見直しを伴うことも考えられる。一般的な生産効率や製造原価の考え方を適用していると、コスト増につながるこうした見直しはなかなか了承を得られず、電圧などの必要最小限のカスタマイズで各国/地域に製品を投入せざるを得なくなるのである。

すると、営業は「商品が現地に合っていないから売れないのだ」と不満を募らせることになり、不毛な社内対立が生じるのである。
グローバルマーケティングの課題3

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日本国内がグローバル化している事例 : サービス業の公用語は英語になりつつある?

アメリカ合衆国は多民族国家のため、見た目では誰がアメリカ国籍を持っていて、誰が国外からの出張者や旅行者かを判断するのは難しいが、言うまでも無く英語を公用語としてお互いにコミュニケーションを取っている

また、私が出張でフィリピンに滞在する時、現地のビジネスパートナーと行動を共にすることが多い。現地のビジネスパートナーはフィリピン人であるが、ホテルやレストランに入ると店員(フィリピン人)は英語で話しかけてきて、フィリピン人どうしでも英語でコミュニケーションを取っている(私と一緒だからかもしれないが)。マレーシアでも同様のことを体験した。グローバルでのコミュニケーションはこのように英語が公用語となっているのである。

日本ではまだ日本人どうしは日本語で話す習慣が根強いが、昨今の外国人旅行者の増加に伴い、そうも言っていられなくなってきている。先日、京都で滞在したホテルでビュッフェスタイルの朝食を取ろうとすると、"Good Morning"と挨拶された。なんとなく違和感を覚えるが、ホテルの従業員の立場に立って考えると、外国人旅行者、特に中国や韓国、東南アジアからの旅行者が多くなってきているために、日本人か外国人かの区別がしにくいため、英語を公用語にしているのであろう。(たまに、こちらが"Hello"と話しかけると「こんにちは」と返してくれる外国人もいるが・・・)。
成田空港でも、係員によるが英語で話しかけてくる人が増えていると感じる。
「日本人どうしなのにいつも英語で話しかけられるんだよ~」という人もいるが、次第にこの英語公用語化の流れは加速するであろう
職種によるだろうが、サービス業では英語が公用語となりつつあり、英語ができないと仕事ができない時代がすぐそこに来ているのではないだろうか?やはり日本国内のビジネスでもグローバル化は必要なのである。



2015年5月16日土曜日

グローバルマーケティングの課題(2) : 顧客ニーズが把握しにくい

「誰に」売るかを決めたとして、次に問題になるのが、顧客ニーズである。グローバルを対象にしていると、物理的に離れた地域のニーズはつかみにくい。
国内市場の話であれば、想定している対象顧客層を集めてインタビューすることもできるし、実物を見せながら意見を聞くこともできる。
しかし、海外となるとそうはいかない。インタビューするにも対象顧客層を見つけるのが難しいし、見つけられたとしても話を聞くためにはお金と時間がかかる。そこまでしてニーズを調査するべきか?という議論が社内で巻き起こり、調査のための予算が認可されないことも多い。
そうなると、現地の事情がよくわからないまま、日本の顧客に合った商品を投入することになる。
そうなると、売れる可能性もあれば売れない可能性もある、いわばギャンブルのような状況になるのだ。私としては、事前にニーズを把握するコストと、実際に商品を投入して売れなかった時の損失をどのように考えているのか聞きたいところであるが、残念ながら、現状はここでつまづくことも多いのである。
 
日本からフィリピン出張に行く時に、買って行くとものすごく喜ばれる大人気の食品があるのだが、ご存知だろうか?
日本では30円で売られているあのチョコレートが台湾で大人気になることは予測できただろうか?
こうした情報は現地の人に聞けばすぐにわかることであるが、日本にいながら把握するのはTV番組などで取り上げられない限りは難しい(TV番組で取り上げられてから参入しても遅い)

グローバルマーケティングは、ニーズの把握においてもジレンマが生じるのである。

グローバルマーケティングの課題2

 
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グローバルマーケティングの課題(1) : 顧客を特定しにくい

「マーケティングとは何か?」で述べた通り、マーケティングとは
誰に(Who)
何を(What)?
どうやって(How)?
どのタイミングで(When)?
商品を市場に投入するかを決める活動である。
しかし、「グローバルマーケティングとは何か?」で述べた通り、全世界を対象にすると、対象範囲が広すぎて「誰に」を決める時点でつまづいてしまう。
北米や欧州のように先進国を想定する場合と、東南アジアや中東・アフリカのような新興国を想定する場合では、ニーズが全く異なるであろう。

例えば、北米のように成熟した市場では約700USドル(約84,000円)する掃除機が売られている(ダイソン製)。高機能である上にデザインが優れている機種が求められるからだ。


一方で、インドのAmazonで最も人気のある掃除機は2199ルピー(約4,300円)だ。高機能やデザインよりも、安くて最低限掃除できれば良い、というニーズの表れであろう。
それでは、国/地域ごとにニーズを分けて考えればよいかと言えば、そう簡単にはいかない。国連加盟国だけで193ヶ国/地域ある状況で、193通りのマーケティング計画を作るとなると、一気にハードルが上がり挫折してしまう。
グローバルマーケティングの1つ目の課題は、対象範囲が広すぎて「誰に」商品を売るかを特定するのが国内のマーケティングよりも複雑な点である。

グローバルマーケティングの課題1



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2015年5月15日金曜日

グローバルマーケティングとは何か?

「マーケティング」の定義の次は「グローバルマーケティング」の定義であるが、その前に「グローバル」の意味から確認しよう。

「グローバル(Global)」という単語を語源から紐解くと、"Globe"(地球・天体・地球儀)という単語に接尾語の"al"を付けて形容詞化ものが"Global"である。さらに、"Globe"の語源を辿ると、ラテン語のglŏbus(球)という単語となる。このように、地球を1つの「球」として捉えていることに由来する形容詞で、「地球規模の、全世界の」という意味となる。
つまり、グローバルマーケティングとは、全世界を対象として捉え、誰に、何を、どうやって、どのタイミングで商品を投入するかを決定する活動なのである。

グローバルマーケティングの定義説明のイメージ

「グローバル」と「国際的」の違いは何か? 

「グローバル」と似たような局面で使われる単語で「国際的(International)」という言葉がある。"International"という単語を分解すると
Inter : ~の間の
Nation : 国家
al : 形容詞を表す接尾語
となる。つまり、「国家/地域間の~」という意味であり、国際線、国際電話など国/地域と国/地域との関係を意識した局面で使われることが多い。

これに対して「グローバル」は、前述の通り1か国や2か国ではなく、もっと広い範囲の国や地域にまたがる場合に使われる。例えば地球温暖化(Global warming)、リーマンショックのような世界的な金融危機(Global Financial Crisis)というようなシーンで使われる。

先ほど、グローバルマーケティングは全世界を対象としていると述べたが、その心は、1つや2つの国/地域にとどまらず、複数の国/地域を対象とする、ということにある。

グローバルマーケティング=海外向けマーケティングか?

 「グローバルマーケティング」と言うと海外進出(特に欧米への進出)をイメージされることがある。しかし、グローバル=海外ではない。上述した通り、地球を1つの「球」として見ることがグローバルの語源なのだから、日本にいながら日本に住む外国人や日本を訪れる外国人とコミュニケーションを取ることも立派なグローバル化である。逆に言うと、日本国内でビジネスをする上でも、うまくグローバル化を推進すればビジネスチャンスは大きくなる。

下記のチャートは訪日外国人の数である。このように右肩上がりの成長を続けており、政府は2020年には2,000万人を日本に呼び込むことを目標にしている。国内で飲食店や小売業を営む人にとって、これ以上のチャンスは無いのではなかろうか?

グローバルマーケティングで重要な年別訪日外国人数の推移

年別訪日外国人数の推移

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2015年5月9日土曜日

マーケティングとは何か?

マーケティングとは何か、と聞かれて何と答えるだろうか?
普段からビジネススキルの研さんに励む人であれば別であるが、スラスラと答えられる人はそう多くはないだろう。

デジタル大辞林によると、「マーケティング」という言葉は下記のような意味を持っている。

顧客ニーズを的確につかんで製品計画を立て、最も有利な販売経路を選ぶとともに、販売促進努力により、需要の増加と新たな市場開発を図る企業の諸活動。


また、日本マーケティング協会の定義は下記の通りである。

マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。(日本マーケティング協会の1990年の定義による)



 さらに、フィリップコトラーの言葉を借りると下記のようになる。

マーケティングとは、製品と価値を生み出して他者と交換することによって、個人や団体が必要なものや欲しいものを手に入れるために利用する社会上・経営上のプロセス
 (Kotler, P. et al., 2006. Marketing, 7th ed. Pearson Education Australia, p.7.)


なるほど。さまざまな定義があることはわかる。しかし、理解しやすい定義かと言われるとすぐには肯定しがたい。

ところで、そもそも英語の"Marketing"にはどのような意味があるのだろうか?英文法の観点から見ると、"Marketing"は"Market"という動詞に"ing"を付けた動名詞である。
プログレッシブ英和中辞典で"Market"の動詞としての意味を読むと、「〈商品を〉市場に出す;売り込む」という意味がある。
つまり、英語の意味で「マーケティング」を解釈すると「(商品を)市場に出すこと、売り込むこと」となる。
実はこれが一番シンプルで理解しやすい。

少し補足をすると、商品を
Who:誰に
What:何を
How:どのように?
When:どのタイミングで?

市場に出し、売り込むかを決めることが「マーケティング」と理解するのがわかりやすいであろう。

言葉の定義は理解したとしても、事はそう簡単ではない。誰に、何を、どのように、どのタイミングで売るか?、マーケティング担当者は日々頭を悩ませているのである。

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