ある年、冬の時期にマレーシアのユニクロの店舗を訪れた。その際に撮影したのが下記の写真である。
ご覧の通り、ディスプレイは冬物だらけであり、現地の気候からすると「季節外れ」の商品が並んでいた。店内も日本の季節に合わせてヒートテックやフリース、厚手のコートがメインとなっていた。日本の真夏に冬物を売っている店を想像していただければわかる通り、まるで購買意欲をそそらない。
あまりにおかしいので店員にインタビューしてみたところ、
「マレーシア人も海外旅行する。寒い国に行く人がいるから、冬物は売れる」
という話であった。
また、現地の日本人にインタビューしてみたところ、
「マレーシアはまだ空調の微調整が効かないことが多く、部屋の中に入ると寒すぎることがある。その際にヒートテックがあると非常に便利だ」
とのことだ。これは一理ある。
しかし、いくらなんでも前面に冬物を出すことは無いのではないか?
試しに、6月にフィリピンのユニクロを訪れてみた。その時に撮ったのが下記の写真である。
ご覧の通り、ディスプレイされているのは夏物である。この時期に冬物がディスプレイされることはない。上記のマレーシアで聞いた理屈のように、「寒い国に行く人がいるから冬物が売れる」のであれば、堂々と冬物をディスプレイすれば良さそうなものであるが、やはりそれはしないのである。
結局、英語を公用語化し、海外に店舗を出しているユニクロと言えども、現地の気候に合わせた商品展開はできておらず、日本と同様の商品を海外でも売っているにすぎない。これでは真のグローバルマーケティングとは言えないのである。
一方、ユニクロの立場に立って考えてみよう。工場で生産する際、販売量の多い日本や中国の季節感に合わせて商品の生産を計画すると、冬場はヒートテックやフリースを多く生産することになる。たとえ、東南アジアで夏場の主力商品であるエアリズムが売れるとしても、そのために工場で段取り替えをしていたら効率が落ちてしまう。すると、ヒートテックの生産に支障をきたすかもしれないのである。
こうした生産側の事情が前面に出て、マーケティングや販売計画も引っ張られてしまうと、真夏にヒートテックをディスプレイするような現象が起こってしまうのである。
グローバルで事業展開する上では、現地事情に合わせた販売計画・生産計画が必要となる。今回挙げたユニクロのような衣料品で言えば、1年中、夏物衣料と冬物衣料を作り、供給できる体制作りが必要になるのである。